MTGArena BO1という存在~エスパーコントロールが最強なのか?~

BO1の世界大会

先日、マジック史上初のMTGAを用いた、BO1の大会、ミシックインビテーショナルが開催された。

優勝者はアンドレア・メングッチ選手。彼が使用したのは、「白単」と「エスパーコントロール」だった。

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アーキタイプ 使用者数 使用率
エスパー・コントロール 36 28.13%
白単アグロ 27 21.09%
赤単アグロ 17 13.28%
エスパー「ドビンの鋭感」 9 7.03%
グルール・戦士 6 4.69%
ティムール「荒野の再生」 6 4.69%
グルール・アグロ 5 3.91%
ゴルガリ・探検 4 3.13%
赤黒絢爛 4 3.13%
セレズニア・トーク 3 2.34%
ジャンド・戦士 2 1.56%
ミシックインビテーショナル・メタゲームブレイクダウンより

https://mtg-jp.com/coverage/mythicinvitational/article/0032266/

上記は、ミシックインビテーショナルにおけるメタゲーム。

デュオスタンという競技ルールの特異性を考慮しても、

これはBO1世界のメタゲームを考える上で十分に価値のある資料になるだろう。

 

また、使用率というのは持ち込まれたすべてのデッキに占める割合のことなので、

一人のプレーヤーが2つのデッキを持ち込むというシステムを考えると、この倍程度の値が(同じデッキを選択するプレーヤーも居たため、厳密には違うが)、おおよそ実際に持ち込まれた割合になる。

 

つまり、エスパーコントロールは50%以上のプレイヤーに選ばれ、ドビンの鋭感型も含めると、約七割のプレーヤーがエスパーコントロールを選択した事となる。

ということは、BO1世界における最適解はエスパーコントロールなのだろうか?

 

 

BO3との違いから考える

そもそも、BO3とBO1は(当然ながら)ルールが違うが、カードブールは全く同じである。

ならばBO3で強いデッキがBO1でも同様に強いのだろうか?

同じように考えても良いのか?

これについては、はっきりとNOと言える。

 

アーキタイプ 使用者数 使用率
スゥルタイ・ミッドレンジ 107 21.5%
ネクサス 71 14.3%
白アグロ 62 12.4%
青単テンポ 60 12%
エスパー・コントロール 45 9%
イゼット・ドレイク 30 6%
赤アグロ 28 5.6%
ラクドス・ミッドレンジ 18 3.6%
セレズニア・トーク 10 2%
グルール・ミッドレンジ 10 2%
ティムール「荒野の再生」 9 1.8%
イゼット・フェニックス 7 1.4%
エスパー・ミッドレンジ 5 1%
グリクシス・ミッドレンジ 5 1%
ゲート・ミッドレンジ 4 0.8%
マルドゥ・アグロ 4 0.8%
アブザン・天使 3 0.6%
ゴルガリ・ミッドレンジ 3 0.6%
マーフォーク 3 0.6%
シミック・ミッドレンジ 3 0.6%
バント・ミッドレンジ 2 0.4%
ディミーア・ミッドレンジ 2 0.4%
ジャンド・ミッドレンジ 2 0.4%

ミシックチャンピオンシップ・クリーブランド2019 初日メタゲームブレイクダウンhttps://mtg-jp.com/coverage/mccle19/article/0031764/

上記はミシックインビテーショナルの少し前に開催されたBO3の世界大会、MCクリープランドのメタゲームである。

ご覧の通り、使えるカードは同じはずなのに、メタゲームは全く違う

 

二番目に数が多いネクサスは、「運命の絆」の禁止によりBO1で使用できないため当然の事としても、BO1では最大勢力を誇ったエスパーコントロールは、五位に落ちている。

 

使用率 一位に輝いたのは、スゥルタイミッドレンジ

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このデッキは環境における王者として、大会前から注目されていて、実際に使用率も高かった。

しかし、BO1の世界においては、その姿は見られない。

というよりも、BO1環境にはスゥルタイを含むミッドレンジデッキがほぼ存在していない

ミッドレンジデッキとは、メインボードはすべてのデッキに4割から4.5割ほどの勝率になるような器用貧乏な構成が多く、サイドボード後に本領を発揮するタイプのデッキとされている。

となると当然、メインボード一本勝負では、すべてのデッキに対してあまり強くないデッキでしかない。

 

 

そして王者とされるスゥルタイに強いとされ、MCでは使用率四位を誇り、優勝を飾った青単もまた、BO1の世界ではあまり目立たない。

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理由は明白で、「相性が有利なスゥルタイがほぼ存在しない」「自分よりも早いデッキに弱い」という性質を持つ青単は、赤単と白単の数が多いBO1ではさほど強いデッキではないからだ。

エスパーコントロールというデッキの特異性

なぜ、BO1でエスパーコントロールがここまで強いのか?

それはもちろん環境に大量に存在するアグロデッキに対する対応力の高さ、メタゲーム上の立ち位置の良さが理由だが、実はそれだけではないように思える

 

実は、エスパーコントロールには、とある特殊なカードが入っている。

ミシックインビテーショナルの大会期間中、何度もこのカードが唱えられてきたが、BO3の大会ではほとんど目にすることがなかったカード。

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首謀者の収得である。

このソーサリーカードは四マナを使用して、好きなカードを一枚サーチするだけのカードだ。

サーチできるのはデッキか、ゲーム外部=サイドボードからである。

(ちなみに、追放領域とゲーム外部は別物なので注意)

BO1というゲームは、サイドボードがない分、デッキの枚数が普通より十五枚少なく、デッキの対応力は必然的にその分下がる。

よって、デッキは基本的に受けるものよりも押し付けるものの方が強くなる。

つまり受ける側であるコントロールは不利になるはずである。

どれか一つのデッキの対策に力を注げば、他が疎かになるからだ。

しかしこのカードの入っているエスパーコントロールは話が少し異なるサイドカード15枚を自由に使えるのだから、特定のデッキに強いカードをサイドボードに詰め込んでおけば、メインボードから相性差を改善できる。

いわば、環境の穴をついた特異点デッキ。それがエスパーコントロールだろう。

 

しかし、それでもエスパーは最強ではない?

エスパーコントロールは、「コンボ、ミッドレンジの不在により対策すべきデッキが少ない」「メインボードでサイドカードを使用できる」という利点から、強力なデッキであることに間違いはない。そして相性不利とされる「シミックネクサス」の不在により、圧倒的な勝ち組に登り上がった。

しかし、本当にエスパーコントロールが文句なしに最強ならば、同じデッキの使用が許されるデユオスタンという環境において、「エスパーコントロール」+「エスパーコントロール」を選ぶのが良いのでは? という結論に至らなければおかしい。

しかし実際にその選択をした人間はほとんど居なかったし、ミシックインビテーショナル準優勝のカニスター選手は「青単」と「赤単」という2つのエスパーではないデッキで決勝にまで上り詰めた。

つまり、エスパーコントロールが強いのは間違いないが、絶対的ではない

 

エスパーの弱点:強烈なマナ拘束

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エスパーコントロールの弱点は明白で、そのマナ拘束にある。

二色土地24枚+基本土地2枚の土地二十六枚がMTGアリーナでよく見る形だが、

こうなると、それぞれの色が出る土地はほとんど均等な三色という形になる。

マナ拘束が厳しい上に、スロットはほとんど除去で埋まっているために、「選択」や「予期」のような軽量ドローサポートもなし。

このデッキは「回れば」理論上最強だが、マジックはそう簡単ではない。

「ケイヤの怒り」が必ずしも四ターン目に打てるわけではないし、「肉議場の叫び」が三ターン目に打てるわけでもない。そして、最大の仮想敵である赤単、白単、青単といった単色アグロデッキは安定したマナベースによって序盤の展開がまごつくことはほぼない。

 つまり、いくら対策をほどこしたとして、三色デッキは単色デッキよりもハンドに求められる基準が高くなるという自明の欠点があるし、BO1はBO3よりも事故による影響が大きい。BO3なら三回に一回は事故で負けても残り二本を取れば勝利となるが、BO1ならゲームを落とす=終了だから。

結論:エスパーコントロールは強力なデッキだが、最強ではない。

 わかりきった結論だが、ということで今回の記事は締めようと思う。

 ここまで長文にお付き合いありがとう。

 次回は、なぜコントロールデッキのカラーがエスパー(青白黒)なのかについて考察していく予定だ。

 

※本文で使用したカード画像は公式サイトのカードギャラリーより引用

https://mtg-jp.com/products/card-gallery/